自閉症スペクトラムの子どもが伸びる勉強法!予習と余裕がカギ!?
2022.06.15
今 砂弥香
こんにちは! 家庭教師のファミリー認定プロ教師の今です。
多くの保護者さまが悩まれる、お子さまの家庭学習や勉強方法。
とくに発達に特徴のあるお子さまの場合、どのような勉強方法やサポートをすればよいのか戸惑う保護者さまもいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は「自閉症スペクトラム」の特性と、その学習面におけるメリット、注意点、また学習のコツやポイントについてお話します。
自閉症スペクトラムの特性とは?
自閉症スペクトラムは、2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSM(精神障害の診断と統計の手引き)が改訂された際、これまで広汎性発達障害と命名されていた小児自閉症やアスペルガー障害を含む障害の総称として新たに命名された名称です。
特性は、大きく分けて4つ。
・社会的コミュニケーションが苦手
・無目的に同じ動作を繰り返す(常同性)
・強いこだわりがある
・感覚過敏(または鈍感)
これらのうち2つ以上の特性を持っていると、自閉症スペクトラムと診断されます。
※いずれの特性も一般人が判断することはできません。また、医療と研究の進歩に伴い、診断基準も変わることがあります。必ず小児精神科等の専門機関での検査と医師の診断を受けてください!
これらが組み合わさることで、学校の勉強についていきづらい、新しい環境になじめず授業に集中できないなどという困り事が起こる場合があります。反面、こだわりを良い方向に発揮してその子の好きな分野の能力を伸ばせる場合もあります。
専門機関での検査と助言をもとに、お子さまに合った学習範囲と方法をさぐることが大切です。
自閉症スペクトラムの勉強法とは?
自閉症スペクトラムのお子さまは、あいまいな表現や、いわゆる顔色・空気をほどよく読むといったコミュニケーションを苦手とすることがあります。
笑顔でやわらかく「ダメだよ」「ここ、間違ってるよ」などと助言した場合でも、「ダメ」「間違い」という否定的な言葉だけを拾ってしまい、必要以上に傷ついてしまう等です。
相手の顔色を過度に気にしすぎて、「どちらでもいいよ」などあいまいな指示を出されたときに「どっちにすればいいんだろう?間違えたら怒られる!」と、パニックになることもあります。
学習をサポートする際の声かけには十分な注意が必要です。
自閉症スペクトラムのお子さまに対する接し方のポイント
・否定的な表現は使わず、肯定文で話す
・あいまいな表現は避け、指示は具体的に出す(「わかるところまで解いて」ではなく「問〇のカッコ〇番まで解いて」と指示)
・大声を張り上げない(感覚過敏の中に聴覚過敏の子がいる恐れあり)
自閉症スペクトラムのお子さまに向いている勉強方法
・予習に多く時間を使う
・短時間で集中して繰り返し学習する
自閉症スペクトラムのお子さまは、こだわりが強く新しいことが苦手だと言われています。
そのため、どの学習においても予習をして気持ちに余裕を持たせておくことが大事です。
また、授業の復習を短時間かつ繰り返し行うことで学習を定着させることができます。
学習を始める前に予定表を作って渡すのも、気持ちを安定させて勉強に集中させるには効果的です。
自分の思考と違うスケジュールや予定外のことが苦手なので、事前に何を学習するのか伝えてあげればお子さまは安心して取り組めます。
なお、自閉症スペクトラムのうちアスペルガー障害の特徴として、聴覚情報よりも視覚情報が有利な傾向があります。
図や絵を取り入れて、視覚にうったえながら学習を進めると理解しやすいでしょう。
ただし、お子さまによってはあまりにもカラフルな教材では情報量が多すぎて、かえって問題内容を把握できなくなることもあります。白黒コピーをとるだけで解決する場合もありますので、いろいろな手段を試してみるのが良いでしょう。
自閉症スペクトラム児への家庭教師のサポート例を紹介
家庭教師であれば、個々の特性に合わせ対応することが可能です。
ここでは私たち家庭教師のファミリーの発達障害支援によるサポート事例をご紹介しましょう。
case1 小3(自閉症スペクトラム)
症状:思い込みが強く怒りっぽい、些細なことで気分が変動する、集中するのに時間がかかる
こちらのお子さまは、自分の想定外の事態になると、気持ちの処理が追いつかずパニックになったりイライラしたりという状態になります。
「算数の掛け算をやりたい」と思っていたのが「掛け算をする予定」と本人の頭で置き換えられてしまい、いざ授業で足し算や引き算のプリントを渡されると「これじゃない!」とパニックになるといったことがありました。
対応としては、しっかりと見通しを示しておきます。
「予定表」を渡し、課題を1つクリアするごとに線を引き予定を消してもらいました。
ねらいは「想定外を減らすこと」と「達成感を味わってもらうこと」。
宿題はその日できるようになった範囲から、短時間でできる問題を出題するようにしました。
想定外からのイライラが落ち着くように、穏やかに話しかけ、根気よく向き合っていると、時間はかかりましたが落ち着きを取り戻し、イスに座ってくれるようになりました。
case2 中3(自閉症スペクトラム)
症状:言語能力が低く、行動や集中力などは小学4年生程度。人の表情をよく読み取り、信用できる人か見ている。信用できる人とわかれば仲良くなり、自分の好きなことなどを話してくれる。しかし、場を考えて話したい欲求を抑えるのが苦手。
信頼関係が築けないと学習が進まなかったため、まずは信頼関係の構築を進めました。
学習には本人の得意な絵を取り入れると、内容が受け取りやすくなったようでした。
自分を見て欲しい、認めて欲しいという欲求の高いお子さまでもあったので、様子をよく観察し、具体的に褒めて自信につなげていけるような声かけを行いました。
できる分野への自信がついて、自ら勉強していく意欲を持たせることができました。
以上のように、個々の特性に合わせて個別のサポートができるのが、家庭教師の大きな強みです。
環境の変化を苦手とする自閉症スペクトラムのお子さまにとって、生活している自宅で先生と勉強することは、とても安心できるいい学習環境だと言えるでしょう。
自閉症スペクトラムの勉強法はお子さま一人一人に合わせて
コミュニケーションが苦手であっても、その様態は一人一人全く異なります。また、コミュニケーションを取ることが不可能なわけでは決してありません。
お子さまにあった方法でじっくり関わり、信頼関係を築くことが可能です。
一見風変わりに見える一つ一つの行動にも、本人なりの理由があります。
また、それらはお子さまの大切な個性でもあります。
私たちはその個性を生かし、得意な分野を伸ばしていくサポートが大切だと考えます。
きめ細やかな個別対応ができるのは家庭教師の最大の強みです。
著者今 砂弥香
生徒や保護者の気持ちを第一に考えた、ベストな指導計画とそれを叶える指導力の高さが持ち味。勉強のみならず、学校生活、家庭生活の悩みの解決を目指した総合的なフォローを行う。なんでも打ち明けたくなる不思議な魅力の持ち主。
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